1京分の1の、さらに177分の1

国際女性デーの朝、ニュースをチェックしていたら、こんな数字が飛び込んできた。1京とは1兆の1万倍。

これは、電力会社に1981年に高卒で入社した60歳の女性が、昇進などで差別を受けたとして、賃金差額1200万円を求めて会社を提訴した裁判を扱った特集記事の中で出てきた数字である。

原告の女性は事務職で採用されたが、男性と同じように働きたいと電気の契約受付の仕事に就かせてもらった。しかし、同期や後輩の男性が次々に出世していく中、役職はヒラのまま。上司に理由を尋ねると「そんなに知りたいんだったら出るところ出ろよ」と言われ、2008年に提訴に踏み切ったという。

会社側は「人事考課は公平公正」「全女性社員の75%は管理職に意欲がない」と全面的に争う姿勢を見せ、「人事考課の基準は男女別にはなっておらず、評価の客観性が保たれていた」と地裁は判断し敗訴した。

控訴した高裁の審理の過程で、彼女と同じ高卒で同期入社した118人(男性83人、女性35人)の男女別のデータを分析したところ、01年時点の賃金の上から54番目までは全員男性で、55番目に初めて女性が登場し、56〜75番目はまた男性で、76番目が女性だったという。

「1京(1兆の1万倍)分の1の、さらに177分の1」というのは、トップ54人に女性が1人も入らず、かつ55〜75番目までに女性が1人以下しか入らない確率だという。しかし、高裁でも敗訴。2015年、最高裁も上告棄却を決定した。

それから8年。「女性活躍」は進んだだろうか。

彼女は実家の母親に子育てを手伝ってもらいながら男性と同じように週1回の当直勤務もこなしてきたという。会社からは、彼女が営業職を希望した時、「家のことがあります」と言わないということを約束させられたとあった。

会社からは『家庭の事情は配慮しない、妻がワンオペで全面的にサポートしてくれている男性社員並みに働け』と言われ、夫からは『家事を完璧にやるなら働いてもいいよ』と言われる国。女性が昇進しないのは『女性が希望しないから』と言われる国。そして『女が仕事をするから少子化が進行した』などと責められる。

管理職として働けるなら働いている。子どもだって産めるものなら産んでいる。

2022年、日本の出生数が初の80万人割れで合計特殊出生率は1.27。考えられていた2倍のペースで少子化が進んでいるという。

そんな中、岸田首相の「異次元の少子化対策」が大きな議論を呼んだ。「異次元の」少子化対策の柱は、1)児童手当などでの経済的支援の強化、2)幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化、3)子育て家庭の相談や一時預かりのサービス拡充、とのこと。

どこが異次元やねん。これだけでは少子化は止まらないだろう。

子どもは産め。でも、労働環境において、女性は男性と対等には扱わない。
ワンオペで家事育児介護しながら、男並みに働くなら認めてやらなくもない。

そんな国では、産みたくても産めない。

女性が男性と同じだけの賃金をもらい、子育てが昇進や昇給のハンデにならず、働き続けられる社会にならなければ少子化に歯止めはかからない。

※ この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。