安心して居られるスペースの持つ、実は大きな意味

春がすぐそこまできていて 冬芽がほっこりしてきました。
ということは! 今年度実施してきた事業が終わる日も近づいて…。

私の所属する団体では、昨年度に引き続き今年度も コロナ禍の女性を支援するということで女性のつながり事業を行政から受託、実施しています。ナゴ女*つながーると言います。5月のFC学会全国大会で活動をご紹介いたしました。覚えていますか? その後の様子をご報告しますね。

今年度のナゴ女*つながーるは5月に改めて再スタート。昨年度も今年もコロナ対応の単年度事業なので、広報も何もかもリセットしての再出発。週2回開催に減りましたが、毎回20〜30名の方が訪れてくれました。事業もほぼ終盤に近づいているにもかかわらず毎回の参加者は増えつづけ、今月には45名、55名と座るイスもないほどに。

夕方5時が近づくと、それまでのがらんとしたロビーと会議室に魔法がかかり、カラフルクッションや小さなおもてなしグッズなどで、瞬く間に温かくてキラキラとしたサロンに変身します。会社帰りによってくださるのでしょうか、もう既に開場を待っていてくださる方が数人。30代40代が中心で、働いている人が多く、家族もいますが、ひとり暮らしの人もいます。

温かい飲み物やお菓子で 人心地つきながら、ゆるゆるとした時間が始まります。参加者同士の編み物サロン、おはなし会、緊急企画というよりその場の思いつき企画でさまざまなクラフトタイムやナゴピ(ナゴ女でピアノ)等、日常の何気ない暮らしの楽しみがそこにあります。終りがけに、帰る前にホッと一息つこうと思ってと寄ってくださる方も。

○○しなければならないことはひとつもなく、開放され緩やかに人とつながれる場なので、始めての人には心許なく感じるかもしれません。でも、ひとりで暮らす、あるいは家族の中で肩身の狭い思いをして居場所のない女性にとって、ここにいていいよと言ってくれる誰かと一緒に居られる意味は大きいのではないでしょうか。

また、ジェンダーの視点から解きほぐす女性のための対人関係スキルや母—娘関係を扱った講座は、いずれも盛況です。女性たちは、職場で、家庭で、社会で、自分を守るために必死で戦っている。”わたし”が自由に生きるために、自分の守り方を身につけたいと願っておられるのでしょう。素の自分で居てもそこでは誰からも攻撃されない 安心してそこに居ることが保障されている 居心地のよい空間は、他にはないスペシャルな場所。貴重なんです、必要なんです、是非この場が存続し続けて欲しいと言っていただいていますが…。

一見、特に生活が破綻していると見えない人も、ひとりひとりと言葉を交わすと、家庭で、職場で、過去に、今に、何らかの生きづらさを抱えていらっしゃることがわかります。福祉の支援まで至っていないし、何とか暮らしているけど、孤立や孤独にさいなまれ、誰かの支えを必要としている人たちがここにいる。支援というほどではないが、暮らしに織り込まれ誰もが集える場所であるからこそ、立ち現れることができたのです。

女性の権利や福祉に関する重要な法案がいくつも同時併行で審議されています。首相や秘書官のLGBTQ差別発言により同性婚法制化も議論の俎上に上がりつつあります。同時に、大きな困難に陥る前に一人ひとりの女性が生きる力を蓄え、女性の人権を守ることへの政治の役割は大きいと思います。

わたしたちは、生まれながらに、すべての人が、平和のうちに、安心して生きる権利を持っていると憲法で保障されているはずの国に暮らしています。しかし、その現実は、不屈の精神で日々不断の努力を重ね、求め続けなければならない、緊張感をはらんでいるものです。身近なセーフスペースを確保しつつ、政治の堕落が社会を崩壊させない様に、非民主的な社会、差別や暴力、戦争を許さない私たちでいたいものです。

※ この記事は、学会、フェミニストカウンセラー協会、フェミニストカウンセリング・アドヴォケイタ―協会が持ち回りで投稿しています。